数値解析ソリューション
地中熱の利用
地下の温度は季節変動が小さく、この性質を利用して温度差による発電や空調などを行うことが検討されています。このような場合に熱交換の効率を評価することを目的とし、地下水による熱の運搬の解析が行われます。地層科学研究所では、このような解析をお引き受けし意思決定に貢献します。
解析例紹介:地下水流による熱移動を解析
地中熱運搬の支配方程式
地盤中を熱が移行する際には、熱量の保存則が満たされると考えます。これは次のように表すことができます。
ここに、Tは地盤の温度、qは熱伝導による熱流束、Cvは地盤の単位体積あたりの熱容量(体積熱容量)、Cvwは間隙水の単位体積あたりの熱容量、vwは間隙中の水の速度です。ただし、地盤と間隙水の温度は常に同じであると仮定します。
上式で、右辺第1項は熱伝導により単位時間に単位体積中で生じた熱量の流入出量の差を表しており、第2項は間隙水により運ばれることで同様に生じた熱量の流入出量の差を表しています。また、左辺はこの熱量の変化が温度濃度の変化をもたらすことを表しています。
地盤の熱容量は次式でモデル化します。
ここに、Cvdは乾燥した地盤の単位体積あたりの熱容量です。
なお、間隙水の平均流速vとvwには、次の関係があります。
したがって、最初の式は間隙水の平均流速を用いて書くことができ、
さらに、次のように変形できます。
上式で、右辺第2項は間隙水の流れにより運搬された熱量であり、第3項は間隙水の流入出量の差によって生じた熱量の変化を表しています。
熱伝導による熱流束は、Fourierの法則に従うものとします。
ここに、λは地盤の熱伝導率です。
解析例 地下水流による熱移動を解析・高温水の注入と排出
地盤中に高温の水を注入する領域と水を排出する領域を設け、地下水流れによって熱が移動する様子を解析により表現してみました。解析モデルを、図1と図2に示します。緑色の領域のうち、右側が注入、左側が排出領域としました。
図3に間隙水圧分布を示します。地下水はモデルの左側から右側へ向かって流れており、注入領域では周囲に比べ間隙水圧が高く、排出領域では周囲に比べ間隙水圧が低くなります。
図4~図7に地中の温度分布の変化を示します。地下水流れによって熱が運搬されることや、右側の排出領域で熱が吸い取られている様子がわかります。