先端技術の開発と活用

地盤内部の剛性低下領域を推定

カルマンフィルタと3次元有限要素法とを組み合わせた逆解析手法を用い、地盤に何らかの原因で剛性の低下が発生した場合の、発生した場所と剛性の低下率を推定してみます。地盤に生ずる剛性の下の原因としては、塑性化や疲労劣化あるいは構造骨格の破壊などが考えられます。

逆解析例:地すべりの発生面を推定

剛性の低下を簡単な応力‐ひずみ関係で示すと、次のようになります。

数式3(剛性の低下を簡単な応力‐ひずみ関係で示す)

ここに、αは剛性低下率、Eはヤング率、ε0は初期ひずみ、σ0は初期応力です。
これをもとに、αを状態変数とした状態空間モデルを作成し、変位の推定値と観測行列を求めます。その上で、カルマンフィルタによりαを推定します。
次に、斜面のすべり面を複数仮定し、地表面の変形から逆解析によりどのすべり面で変形が発生したのかを推定した例を紹介します。用いたモデルを図1に示します。黄色と緑及び赤の領域ですべりが発生するものと仮定し、すべり変形はこれらの領域の剛性(ヤング率)低下で表現します。
最初に、黄色と緑の領域に剛性低下を発生させ、小さい方のすべり面ですべりを起こさせます。このときの地表面の変形からすべりを生じた面を逆解析により推定します。逆解析の結果では、黄色と緑の領域で剛性低下が生じ、すべりが発生したことが推定されています。

図1 解析モデル
図1 解析モデル
図2 順解析結果(変位分布)
図2 順解析結果(変位分布)
図3 逆解析結果(変位分布)
図3 逆解析結果(変位分布)
図4 逆解析結果(剛性低下率分布)
図4 逆解析結果(剛性低下率分布)

今度は、黄色と赤の領域に剛性低下を発生させ、大きい方のすべり変形を起こした場合の地表面変形を使った場合です(図5~図7)。逆解析の結果では、黄色と赤の領域で剛性低下が生じ、すべりが発生したことが推定されています。

図5 順解析結果(変位分布)
図5 順解析結果(変位分布)
図6 逆解析結果(変位分布)
図6 逆解析結果(変位分布)
図7 逆解析結果(剛性低下率分布)
図7 逆解析結果(剛性低下率分布)
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