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やわらかサイエンス

レアメタル・レアアース その1 -レアだけに貴重です-(中編)

担当:藤原 靖
2023.07

前編では、周期律表の中でレアメタル・レアアースがどこにいるのかについて見てみました。中編では、どのようなレアメタル・レアアースが、どのようなものに使われているのかについて紹介します。便利で軽い、省エネルギーな電気電子製品には、全て使用されていると言って差し支えないと思います。

2010年に日本と中国の間に発生した尖閣諸島沖での中国漁船と日本の海上保安庁巡視船との衝突事件をめぐって、両国に緊張関係が生じました。日本はレアアースを中国に著しく依存していたため、中国は日本に圧力をかけるため事実上の輸出禁輸措置をとりました。そこでレアアースに限らず、レアメタル全体に係る特定国への過度な依存ということがクローズアップされ、日本の国としての重要な課題となりました。

用途はハイテクさまざま

レアメタルは、構造材料の強度を増したり錆びにくくするための添加材として、クロム、ニッケル、チタンなどはかなり以前から使われてきました。技術の進歩に合わせて、レアメタル・レアアースは発光ダイオード、電池、永久磁石などの電子機器用途や磁石材料として、触媒、光学ガラス、蛍光体などの機能性材料として多岐にわたって使用されています。
製品としては、液晶テレビ、スマートフォン、自動車などですが、低炭素社会の構築に向けて重要な電気自動車や蓄電池などの分野で、さらなる需要の拡大が見込まれています。

レアメタルの主な用途

3(Li)リチウム :リチウム電池など
4(Be)ベリリウム :防衛産業や航空宇宙産業用の資源材料
5(B)ホウ素 :ゴルフクラブや釣り竿など
22(Ti)チタン :高耐食性材料、光触媒など
23(V)バナジウム :ゴルフクラブのヘッドやデンタルインプラントなど
24(Cr)クロム :高耐食性のクロムメッキ、ステンレス鋼素材など
25(Mn)マンガン :合金素材、マンガン乾電池・リチウム電池正極材料など
27(Co)コバルト :リチウム電池、高速度鋼等の特殊鋼、磁性材塗料、磁石など
28(Ni)ニッケル :電池、メッキ素材、ステンレス鋼素材、硬貨など
31(Ga)ガリウム :マイクロ波集積回路や半導体レーザー用材料
32(Ge)ゲルマニウム :健康器具用素材、食品や化粧品用素材、電子部品素材など
34(Se)セレン :半導体や光伝導用素材など
38(Sr)ストロンチウム :真空装置や密閉装置の真空維持用の残留ガス吸着材など
40(Zr)ジルコニウム :セラミックス用素材など
41(Nb)ニオブ :磁性、超伝導性素材など
42(Mo)モリブデン :ハイブリッドカーの電子基板など
44(Ru)ルテニウム :ジェットエンジンのタービンなど
45(Rh)ロジウム :プラチナやホワイトゴールドの保護用剤、自動車向け触媒など
46(Pd)パラジウム :自動車触媒など
49(In)インジウム :液晶などのフラットパネルディスプレイの電極膜など
51(Sb)アンチモン :難燃助剤、塗料・黄色顔料、触媒、合金素材など
52(Te)テルル :鉄鋼の開削性、耐食性付与素材など
55(Cs)セシウム :光電管・放電管、触媒促進剤など
56(Ba)バリウム :アルミニウム合金の脱酸材、自動車の点火装置など
72(Hf)ハフニウム :鉄鋼の耐食性付与素材など
73(Ta)タンタル :電子機器のタンタル電解コンデンサなど
74(W)タングステン :切削工具等のタングステン合金や超硬合金用素材など
75(Re)レニウム :ジェットエンジン用タービンのブレードなど
78(Pt)白金 :自動車の排気ガス触媒など
81(Tl)タリウム :光学ガラス、合金素材など
83(Bi)ビスマス :鉛フリーのハンダ添加材など
左:電気自動車のモーター 中:半導体基板 右:大型フラットパネルディスプレイ
左:電気自動車のモーター 中:半導体基板 右:大型フラットパネルディスプレイ

レアアースの主な用途

39(Y)イットリウム :ジルコニア安定剤、蛍光体(赤)、光学ガラス素材など
59(Pr)プラセオジウム :磁石、セラミックタイル発色剤(黄)、セラミックコンデンサ素材など
60(Nd)ネオジウム :ネオジウム磁石、ニッケル水素電池、セラミックコンデンサ素材など
62(Sm)サマリウム :サマリウムコバルト磁石
63(Eu)ユウロピウム :蛍光体(青・赤)
64(Gd)ガドリニウム :磁石、光学ガラス、蛍光体(緑)、放射線遮蔽材など
65(Tb)テルビウム :蛍光体(緑)
66(Dy)ジスプロシウム :ネオジウム磁石
68(Er)エルビウム :ガラス添加剤

先端技術に不可欠な半導体ですが、半導体に使われるレアメタルは、単独で半導体になる元素半導体と複数の元素で作る化合物半導体とがあります。
元素半導体は、ケイ素、ゲルマニウム、セレン、テルルなどで、このうちケイ素が元素半導体として最も多く使われています。
化合物半導体は、半導体だけではなく、半導体レーザーや可視光の発光素材にも用いられています。代表的なものは、ガリウムとインジウムを用いたガリウムヒ素(GaAs)、インジウムリン(InP)、窒素ガリウム(GaN)、亜鉛とテルルを用いた硫化亜鉛(ZnS)、セレン化亜鉛(ZnSe)、テルル化亜鉛(ZnTe)、テルル化カドミウム(CdTe)などがあります。

前編ではレアメタル・レアアースとはどのような鉱物資源であるか、中編ではどのような産業分野で使われているかについて紹介しました。先端技術にとって非常に重要なレアメタル・レアアースですが、産出国が限られた偏在した資源なのです。
後編ではレアメタル・レアアースの偏在性について注目してみます。

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