技術資料
やわらかサイエンス
石と水から作るコンクリート-時代の移り変わりとともに-(後編)
中編では骨材の石のこと、セメントの種類、「養生」について紹介しました。後編ではニーズや意識とともに多様化するコンクリートについて紹介します。
コンクリートの種類は多種多様ですが、用途や性能によって名前が付けられ、使い分けされています。
■強さで
普通コンクリート
最も一般的なコンクリートの種類で、設計基準強度(Fc)が36N/mm²以下という強さの性能が定められています。
高強度コンクリート
普通コンクリートよりも強いコンクリートです。超高層ビルなど、同じ大きさの柱や壁であっても、より強いものが必要な場合に用いられます。技術の進歩の著しいコンクリートです。
■流れやすさで
流動化コンクリート
コンクリートは、流動的な状態で流し込んで打設します。流動的な状態での性能は、コンクリートに隙間ができず砂や石の分布に偏りがないことが重要です。そこで、鉄筋や鉄骨がある空間でも流れやすく分離しにくくしたものが流動化コンクリートです。
高流動化コンクリート
さらに流動の条件が厳しい場合に用います。コンクリート充填鋼管造での充填用のコンクリートなどに使用します。
■重さで
軽量コンクリート
一般的なコンクリートの比重は2.3ですが、軽量コンクリートの比重は1.7~2.1です。軽量コンクリートは、構造体として用いることは少なく、強度を求めない屋根の防水押えや床の防音目的で必要な増し打ちコンクリートなどに使います。軽量コンクリートには、重量を軽くするため軽量骨材を使います。
軽量骨材の原料は、真珠岩と黒曜石を原料としたものや膨張頁岩等です。いずれも原料を破砕して焼成・発泡させたものです。水に浮くような軽さです。
重量コンクリート
鉄鉱石などの比重の重い石を使って重量を増やしたコンクリートのことです。放射線は、密度が大きなものほど通しにくくなるため、原子力発電所、X線照射室、アイソトープ貯蔵庫など、放射線の遮蔽が必要な施設の建設に用いられます。
■作る季節で
寒中コンクリート
コンクリートの硬化は水和反応で生じます。水和反応は化学反応なので、気温などの環境が大きく影響します。冬季には気温が低すぎて水和反応が進まない、水和反応が止まるなどの支障が出ます。そこで低温を想定して水和反応を促進させる薬剤を使用し、補助として保温などの養生で対応するのが寒中コンクリートです。
暑中コンクリート
夏場などの高温環境では、コンクリートが固まるのが速くなってしまいます。コンクリートを流し込むそばから固まってしまう、高温によって水が蒸発してコンクリートの品質に影響が出てしまうような支障が出ます。そこで水和熱があまり大きくないセメントの使用、硬化を遅くさせるための薬剤の添加、冷却などの養生で対応するのが暑中コンクリートです。
■作る場所で
レディーミクストコンクリート
工場で作ってミキサーを搭載した生コン車で現場に運搬して、現場ですぐに使うことができるコンクリートが一般的です。これをレディーミクストコンクリートといいます。
プレキャストコンクリート
現場に生コン車で運んでコンクリートを打つよりも、あらかじめできているコンクリート製品を使う方が、天候や作業環境から都合の良い場合があります。このような工場で製品として作るコンクリートをプレキャストコンクリートと言います。プレキャスト版、ヒューム管、電柱などがこの仲間です。
現場練りコンクリート
生コン車で運ばず建設中の現場でコンクリートを作るという場合もあります。ダム、大きな橋の土台、大規模な海上の施設など、建設現場にコンクリートを製造する設備を作る方が都合の良い場合があります。
■環境意識で
エコセメントを使用したコンクリート
セメントの原料は、石灰石、粘土、ケイ石等ですが、エコセメントは石灰石、粘土、ケイ石の代替として、都市ごみ焼却灰、汚泥等を原料として作ったセメントです。都市ごみ焼却灰には、セメント製造に必要な成分が全て含まれているため、エコセメントの活用は廃棄物を再資源化することで、ごみ処理負荷を軽減することになります。
環境配慮型のコンクリート
夏セメントの半分以上を特殊な無機材料や産業副産物に置き換えること、発電所や工場の排気ガス中のCO2をコンクリートに大量に固定することなどにより、二酸化炭素排出の低減という環境に配慮したコンクリートです。またこれまで廃棄処分していた工場に戻される生コンクリートを原材料として再利用して資源循環を図るという環境に配慮したコンクリートです。
石と水から作るコンクリート ~ 時代の移り変わりとともに ~ は如何でしたでしょうか。
コンクリートは大変身近で便利な材料であるだけに、ニーズに応じて多種多様です。
コンクリートは建設産業の主役ですが、時代の移り変わりとともに生産性から高性能、高品質へ、さらには環境との調和性へと人の知恵が注がれています。