技術資料
やわらかサイエンス
石と水から作るコンクリート-時代の移り変わりとともに-(前編)
建設産業では土木や建築という言葉があります。土木は、まさに建設工事にかかわる土と木です。土は、岩盤、地盤、盛土、土砂、石材などで、木は足場、土台、壁、柱、屋根などの象徴です。近年の建設産業では、土と木に鉄やコンクリートが加わっています。まさに土木は、土木鉄コです。
木と鉄を除けば、土とコンクリートは、土、石、岩が材料です。そこで今回は、コンクリートに注目してみました。
■セメント、モルタル、コンクリート、その違いは?
セメントやコンクリートという言葉は、私たちの生活では馴染みのある言葉です。しかし、セメント、モルタル、コンクリートの違いをご存知でしょうか。セメントで補修する、壁にモルタルを塗る、コンクリートを打つなどの表現がありますが、どれも「はじめは柔らかくて後で固くなる色がグレーの建設材料」として一緒にしていませんでしょうか。
「コンクリートを打つ」は、枠の中にコンクリートを流し込むコンクリート打設という用語からきています。
セメントはグレーの粉状のもので接着の役目を果たすものです。
セメントは水と混ぜるとペースト状になり、水和反応という化学反応を起こして固まります。この粉がセメントで、水と混ぜたものがセメントペーストです。
モルタルは、セメントペーストに混ぜ物として砂が入ったものです。砂は、細骨材と呼ばれ、一般的には5mm以下の大きさです。モルタルは、あまり分厚くない厚みで床や壁を作るときに使います。
コンクリートは、モルタルに石が入ったものです。石は粗骨材と呼ばれ、一般的には5~20mmの大きさです。分厚い壁、床、柱などを作るときに使います。ダムのような非常に大きいものをコンクリートで作る場合は、粗骨材に最大150mmの大きさの粗骨材を使うことがあります。
■セメントの材料は石
セメントは、石灰岩という石と粘土を混ぜて焼いて作ります。できあがったものをクリンカと言います。セメントも石の仲間ということになります。
石灰石鉱山は全国に300以上あり、セメント工場も全国各地に分布しています。特に石灰石資源が豊富な北九州地区、山口県、関東地区に多く、社名は変遷していますが、宇部セメント、小野田セメント、秩父セメントのように地名に由来したものもありました。
セメントには、クリンカに無機材料として高炉スラグという製鉄工程で発生する副産物やフライアッシュという石炭火力発電所で発生する副産物を混ぜる場合があります。臨海工場地帯では、セメント工場、製鉄所、発電所が連携して社会資本整備を支えています。
■セメントは国作りの基礎
現在の日本では、道路、鉄道、発電所、空港、港湾などの社会資本と呼ばれる公共財が整備されています。どの社会資本にもセメントが使われています。日本では明治時代から、最初はレンガ、鉄、ついでセメントの国内製造が発達してセメントの需要に応えてきました。
当然、海外でも同様で、その代表が中国です。中国は国土が広大であることもあり、世界1位の生産量に至っています。そして台頭が著しいのがインドだそうです。国土の発展の最盛期には、人口1人当たりの年間セメント消費量は2トンになるという統計があるそうです。この流れは、アフリカ諸国へと移っていくと予想されています。
前編ではセメント、モルタル、コンクリートの違い、セメントの材料やセメントは国作りの基礎であることについて紹介しました。中編では、もう1つのコンクリートの重要メンバーである骨材の種類や品質と多種多様なセメントの種類について紹介します。