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やわらかサイエンス
海で見る鳩 -山・海・岩の関係-(後編)
アオバトについてもう少し詳しく紹介しましょう。ところで、日本で見られるハトは7種くらいです。馴染みのあるハトは市街地の開けた場所や駅などにいるカワラバト、通称ドバトと公園などの樹木が多い場所にいるキジバトの2種です。カワラバトは外来種で、ヨーロッパ・中央アジア原産です。
残りの5種は、カラスバト(本州中部以南)、キンバト(宮古島以南の西南諸島)、アオバト、ベニバト(冬鳥として西日本に飛来)、シラコバト(関東地方北東部の狭い地域)といった稀少なハトたちです。
■アオバトはどんなハト
アオバトの野鳥観察での識別のための記載は次の通りです。身体の大きさはカワラバトやキジバトとほぼ同じです。
アオバトL33cm 体は緑色で額から前頸・胸は黄色味が強く、腹は白くて脇から下尾筒には黒緑色の縦斑がある。雄の小雨覆は栗茶色。声:オーアオー、オ、アォーなどと鳴く。習性:九州以北のよく茂った広葉樹林で繁殖し、北日本では冬期に暖地へ移動する、樹上で木の実を食べるが、地上に下りることもある。海岸の岩に下りて海水を飲む例が多く知られている。
(フィールドガイド日本の野鳥)
■アオバトはどうして大磯に
ところでアオバトは大磯の岩礁で何をしているのでしょうか。アオバトは磯に降りて窪みに溜まった海水を飲んでいるのです。
記載にあったようにアオバトの食べ物は木の実や果実が主体となっています。照ヶ崎の磯でアオバトの糞を採取して、糞の中に排出された種子植物の種類を判定したところ、ミヤマザクラの種子がでてきたそうです。ミヤマザクラは標高1000メートル以上にしか分布しないこのことから、この付近では丹沢山地が分布地に該当します。アオバトは、丹沢の山から20~30キロメートルくらいを飛んで照ヶ崎の磯に来ていると考えられています。また実際に2002年には、丹沢でのアオバトの繁殖が確認されたそうです。
アオバトの食べ物である木の実や果実にはナトリウムがほとんど含まれていません。そこで体内のナトリウム・カリウム濃度を確保するために、アオバトは海水を飲んでいるのではないかということです。
ではどうして大磯の照ヶ崎海岸なのでしょうか。照ヶ崎海岸の東西には湘南海岸と呼ばれる海岸が続きます。照ヶ崎海岸より東側には茅ヶ崎の漁港や烏帽子岩、江の島に岩礁がありますが、西側は砂浜だけで岩礁はありません。岩礁の中では、照ヶ崎海岸が丹沢山系との距離が最も短く、また途中に森林などの休息できる環境があるなどが大きな要素ではないでしょうか。
国府津から鎌倉にかけて続く海岸は砂などが堆積してできた海岸なので、堆積海岸と呼ばれています。堆積海岸には、国府津海岸のような大きな礫からなる礫浜、相模川河口のような泥質な堆積物からなる干潟もありますが、湘南海岸の大部分は砂浜海岸となっています。
海で見る鳩 ~ 山・海・岩の関係 ~ は如何でしたでしょうか。アオバトはウグイス色をした綺麗なハトです。山から遥々海水を飲みに来るとは面白い習性ですね。木々の多い場所ではアオバトを見かけるかもしれません。どこかに海水を飲みに行った帰りかもしれませんね。