技術資料
やわらかサイエンス
じめんの中の壁もいろいろ(中編)
中編ではセメントを使って厚い壁を作るいろいろな方法を紹介します。
■セメントを使って厚い壁を作る
壁を作る材料としてセメントを使うものがあります。この場合、壁は厚く頑丈になります。作り方には3通りあり、それぞれに材料や作り方に特徴がありますが、どれも水を止める能力が高いことで知られています。
1つ目は、地下連続地中壁(ちかれんぞくちちゅうへき)工法というものです。これは、地面の中に掘削機を降ろして深い溝を作り、溝の中に組んだ鉄筋をおいてコンクリートを流し込むことで、鉄筋コンクリートの壁を作る方法です。地面の中に深くて丈夫な壁を作ることができるので、巨大な天然ガスの地下タンクの壁や豪雨時に雨水を河川に流さず人工の地下河川に流す際の巨大な立坑などの壁に使われます。
2つ目は泥水固化壁(でいすいこかへき)工法です。地面に掘削機で溝を掘る場合、溝の周りから土砂が崩れ落ちないように安定液という液体を入れて掘ります。この安定液は、ベントナイトという粘土を水でといた泥の水を使います。掘削機で掘りあがった溝は泥水で満たされています。これにセメントミルクを入れて混合して、泥水を固めて壁を作ります。壁はあまり強くはないので、止水が専門の壁です。
3つ目は柱列式(ちゅうれつしき)地下連続地中壁工法というもので、地面の中に円柱の柱が並んだ壁を作る方法です。円柱の柱は、オーガーと呼ばれるスクリュードリルで穴を掘っていき、そこにモルタルを流し込む方法とスクリュードリルで穴を掘る時にセメントミルクと土砂を地面の中で混ぜながらソイルセメントを作っていく方法との2通りがあります。どちらの場合も円柱の柱はオーバーラップして作られ、円柱の中心に鉄骨を差し込んで補強します。
柱列式地下連続地中壁工法は、沖縄県や鹿児島県に点在する石灰岩質の離島に地下水を貯めるための地下ダムの壁にも用いられます。
中でもソイルセメントを作る方法は、原位置撹拌(げんいちかくはん)工法といって、非常に効率が良いため普及している方法です。ビルの地階を作るための山留壁・止水壁は、たいてい原位置撹拌工法です。原位置撹拌工法は、スクリュードリルで円柱状に掘るのが一般的ですが、巨大なチェーンソー式の掘削機を地面に差し込んで、セメントミルクと土砂を混ぜながら横向きに地面を切っていくようにソイルセメントの壁を作る方法もあります。
中編はここまでです。壁の話はまだまだまだ続きます。