技術資料
やわらかサイエンス
小学生からの質問に答えて ―なぜ地層はデコボコしているの?―
2012年夏、地層科学研究所宛てに小学6年生の女の子から手紙が届きました。
「今、6年生の勉強で地層の学習をしているのですが、聞きたいことがあります。」
そして5つの質問が投げかけられました。今回は投げかけられた5つの質問への回答を紹介したいと思います。
5つの質問
質問は次の5つですね。どれも、とてもいい質問ですね。
- 地層はその土地、その土地によってもようや形はちがうのですか?
- なぜ、地層はデコボコしているのですか?
- その土地、その土地によって作られ方はちがうのですか?
- 地層は地層でもなぜ種類があるのですか?
- 自然災害にもじょうぶなのですか?
上の質問の1~4は「地層のでき方」に関連する質問だと思いました。ですので、1~4をまとめて「地層のでき方」としてお話します。
そして、これからお話する「地層」は、大きく分けると「水によって運ばれ、溜まってできるもの」と「火山の活動によってできるもの」があります。この二つの地層ができる場所やでき方についてお話します。
-水によって運ばれ、溜まってできるもの
まず、地層は「どこ」にできるのでしょうか?
水によって運ばれるってことは、地球上で水があるところを考えると、川や湖そして海ということになりますね。ですので、地層は川や湖そして海にできます。その中でも一番大きな面積は海なので、地層の大部分は海からできているのです。
では、どのようにできていくかというと、川の石や砂が上流(山の上にある場所)から下流(海に近い場所)に運ばれ、その大部分は、海に到着し、海底にたまっていきます。
川の上流と下流の石や砂を見たことはあるでしょうか?
川の上流では、大きな岩がたくさんあるのに対して、下流では小さな石や砂になっています。海に運ばれた後も川から遠ざかって、沖合に行くにしたがって、もっと、細かい砂や泥になっていきます。
専門的に言うと、石や砂や泥がたまってできるものを「堆積物(たいせきぶつ)」と言います。その後、堆積物(たいせきぶつ)がどんどんたまることで硬くなり岩石となったものを「堆積岩(たいせきがん)」と言います。堆積岩(たいせきがん)には、堆積物の大きさによって種類が分かれています。石のサイズからなる岩石を「礫岩(れきがん)」、砂のサイズからなる岩石を「砂岩」、泥のサイズからなる岩石を「泥岩」と言います。
ところで、地層を見たことがありますか?その地層をよく観察して、石や砂や泥の集まりでできていたら、地層ができた場所は、川や海でできていたと考えられます。さらに、よく観察して堆積物(たいせきぶつ)の大きさがわかったら、川の上流から海の沖合いまでの場所のうち、どのあたりで地層が作られたかを知ることができます。
では、次に地層の模様はどうやってできていくかをお話します。さきほどお話ししたように川の上流から海の沖合に運ばれていくうちに堆積物(たいせきぶつ)がどんどん細かくなりますが、同じ場所でも堆積物(たいせきぶつ)の大きさは変化します。たとえば、山で大雨が降り洪水などが発生すると、水による運ぶ力が強くなるため、それまで砂しかたまらなかった場所でも小石や大きな石がたまります。そのような繰り返しがおきるとそれが地層の模様となります。
それから、浅い海では波の影響を受けて、波の模様がそのまま地層の模様となる場合もあります。そのほか、地盤が持ち上がったり、沈んだりすることで、昔、海だったところも持ち上がることで陸上になったり、陸上だったところが沈むことで海になったりすることもあります(地盤が持ち上がったり、沈んだりすることは後ほどお話します)。そのようなことを繰り返すと地層は、河口近くだった頃や沖合だった頃の模様ができていきます。そのおかげで、私たちが住む陸上にも海の地層が観察できる場所があるのです。
お住まいのある札幌近辺には、手稲山や藻岩山があると思います。手稲山は私もスキーやスノーボードで訪れたことがあります。その手稲山や藻岩山は、さきほどのお話した「水によって運ばれ、溜まってきるもの」とは違った地層のでき方をしています。それは、火山の活動によってできます。活動している火山は、地下深くに非常に高温でドロドロの「マグマ」が存在しています。そのマグマが地表に向けて上がっていくとともに冷めていき、最後には冷え固まって岩石となります。そのようにしてできた岩石を「火成岩(かせいがん)」と言います。手稲山や藻岩山はそのような「火成岩(かせいがん)」で作られています。また、マグマでもいろいろな種類の違い、冷え固まる時間の違いなどでいろいろな模様(鉱物)になります。
これまで、お話ししたように、地層は「水によって運ばれ、溜まってできるもの」と「火山の活動によってできるもの」に分けられます。その土地よって地層が作られた当時、どのような環境であったか(たとえば、海であったり、地下深くのマグマであったり)によって、「堆積岩」や「火成岩」になるのです。
また、地球上では、地盤が持ち上がったり、沈んだりする「地殻変動(ちかくへんどう)」という現象が起きています。専門用語では、地盤が持ち上がることを「隆起(りゅうき)」、沈むことを「沈降(ちんこう)」といいます。
特に、私たちが住んでいる日本はこの地殻変動が激しいところです。
2011年に発生した東日本大震災では、地震によって数mも「沈降(ちんこう)」が海岸線沿いに起きて、今でもその状態が続いている場所もあります。お住まいの近くでも山や谷があると思いますが、そのようなデコボコもこの地殻変動が大きく関係しています。
地殻変動の影響によって海に平らにたまった堆積物からなる地層や火山の活動によってできた地層でも、「地殻変動(ちかくへんどう)」を受けて、熱の影響や地盤の力が加わり、持ち上げられたり、曲げられたりすることでデコボコになります。
また、一度、「堆積岩」や「火成岩」になった岩石が、熱の影響や地殻変動による力によって岩石のもようがゆがんだり、曲がったりすることがあります。そのような岩石のことを「変成岩(へんせいがん)」と言います。
ここまでが、1~4までの質問に対する回答です。では、最後の「自然災害にもじょうぶなのですか?」についてお答えします。
ー自然災害にもじょうぶなのですか?
いろいろな地層をお話してきましたが、その地層ごとに性質が違います。たとえば、「力を加えるとずれてしまう地層」、「水に浸すとくずれてしまう地層」、「揺さぶられると水のようにぐにゃぐにゃになってしまう地層」などがあります。これらの性質は、自然災害に大きな影響を及ぼします。
一番目の「力を加えるとずれてしまう地層」では、「断層(だんそう)」と呼ばれる割れ目(裂け目みたいなもの)が発達している場合がよくあります。地殻変動で地盤に力が加わると割れ目沿いにずれが生じてしまいます。それが、地震という現象です。これは、地層の種類に関係なく「断層(だんそう)」がある土地は、地震がおきる可能性が高いため、気を付けなければいけません。
地層がずれている写真:中央付近の斜めに入っているすじは、断層(だんそう)と呼ばれる裂け目です。
左右から押されて地層がずれていることがわかります。
雨などが降るとやわらかい地層はくずれやすいよ。
この崖は、おそらく、雨などでくずれてしまった様子
最後の「揺さぶられると水のようにぐにゃぐにゃになってしまう地層」では、「液状化」と呼ばれる災害となります。これは、また、固まっていない砂の地層で起きる場合多いのですが、地震によって地盤が揺さぶられることによって、砂が水のような動きをして、地表に吹き出したり、地盤をゆるませたりしてしまいます。2011年の東日本大震災では千葉県浦安市などで大きな被害がでました。
おわりに・・・
地層の種類や成り立ちは、お話した以外にもたくさんまだまだありますが、これで、質問に対するお返事とさせていただきます。いただいた質問に対してうまく答えられたか少々不安ですが、もし、わからないことがあれば、また、お手紙をお待ちしています。
実は、私も、小学校6年生の時に担任の先生から貝の化石をもらったことが地層に興味を持ち始めたきっかけでした。
地層を勉強することは、その場所のなりたちを知ることもできますが、自然災害に対する防災につながることにもなります。ですので、今回の地層の学習を通じて、地層についてもっと興味をもってくれたらうれしく思います。