技術資料

地質モデリング

08.こぼれ話3~基盤の凹凸~

担当:冨永 英治
2022.04

これまでは、白亜系~古第三系の小仏層群および相模湖層群、そして、新第三系の丹沢層群と愛川層群に焦点をあてましたが、次に出現する地層は、新第三系中新統~鮮新統の鷹取山層および中津層と新第三系中新統~第四系更新統の上総層群です。分布するエリアでは、住宅地も多く広がっており、まさに、私たちの生活圏を支える基盤岩となっています。その基盤岩は地殻変動により、凹凸や傾きが地質データから確認することができます。

鷹取山層、中津層、上総層群の地質分布を確認するために、地質平面図で分布を確認してみますと、なんと、図幅中の北部に中津層群、北東端に上総層群、南西端に鷹取山層が少しだけ分布しているのみです。つまり、多くのエリア(特に平野部)では、それよりも新しい地層に覆われているというわけです。

地質平面図
地質平面図を確認する

では、地下ではどのような分布、構造をしているのでしょうか。今度は、地質断面図を確認してみましょう。図幅の北側の断面図に「上総層群」があります。そこから、南側に行くに従い、傾動していき、途中で図の下限(標高-100m/下図分布図の黄緑部分)から消えていきます。しかし、最も南側(寒川~藤沢あたり)になると、少しですが、図の下限(標高-100m/下図分布図の黄緑部分)から再度出現して上に凸の形状となっています。その部分は、全体的に地殻変動により隆起したとされています。

地質縦断図で分布を確認
地質縦断図で分布を確認
(地質平面図・地質断面図の出典:岡重文・島津光夫・宇野沢昭・桂島茂・垣見俊弘,地域地質研究報告 5万分の1図幅,東京(8)第73号,藤沢地域の地質 同地質図)

中津層は、神奈川県愛川町を中心として相模川両側に模式的に発達し、貝化石を多産することで知られています。そして、下位層に相当する小仏・相模湖層群とは不整合で覆っています。

上総層群は、神奈川県東部の多摩丘陵から房総半島にかけて分布しています。シルト岩、砂岩泥岩互層が主です。最も厚く堆積している箇所は、東京湾の北東部から房総半島外房にかけて2000m程度の層厚になると言われています。
この中津層と上総層群の上面のトレース線を使って、面を作成し、コンターマップを作成してみました。北部エリアは、南側(南西側)へ傾動していることや南部エリアでは、上に凸状になるエリアが存在していることがわかります。

中津層および上総層群の上面の傾き
<小仏(こぼとけ)の名称由来>
奈良時代(西暦715~806年)に行基菩薩が宝珠寺という寺を建立し、その際に1寸8分ほど(約5.5cm)の小さな仏像を安置したことに由来とのこと(奈良時代建立の寺は焼失のため現存しない)。余談ですが、国宝に指定されている中での最小の仏像は、京都・仁和寺所有の秘仏で平安時代(12世紀)に造像された、高さ約11cm(台座部を除く)の薬師如来坐像だそうです。

鷹取山層は、本エリア南西隅の大磯丘陵の鷹取山を構成しています。礫岩を主体とし、しばしば、中~細粒砂岩、まれに黒色泥岩を挟んでいます。しかし、厚いロームに覆われて、露頭が少ないそうです。しかし、鷹取山北東部では、貝化石が産出されるそうです。この鷹取山層を含む大磯丘陵は、丹沢ブロックの形成から衝突時に形成された地層も含むため、丹沢衝突と重要な関係があると言われています。

コンターマップ図
コンターマップ図
<中津層群の貝化石>
約350~200万年前に体積した地層の中津層群からは、保存のよい貝化石がたくさん出てくるそうです。神奈川県立生命の星・地球博物館では、大きな本を模した形の「実物百科図鑑」の形でその貝化石を展示していますよ。
参照:神奈川県立生命の星・地球博物館
<神奈川県内に複数の鷹取山(たかとりやま)>
上図に示しているのは、神奈川県大磯町にある鷹取山(標高219m)です。県内には、もう一つ横須賀市と逗子市の間に鷹取山(標高139m)があります。さらに、県内には漢字違いの高取山(標高556m)もあります。調べてみると全国にたくさんの「たかとりやま」が存在することを知りました。
ページの先頭にもどる