技術資料

地質モデリング

05.小仏層群(相模湖層群)、丹沢層群、愛川層群をモデル化する

担当:冨永英治
2022.01

まずは、このエリアの古い地層に区分される「小仏層群(相模湖層群)」、「丹沢層群」、「愛川層群」の3つをモデル化していきます。

(1)推定線を引く

推定線とは、Geo-Graphiaで地質を推定させるための地層境界のことです。この推定線に対して、後述するプライオリティ(優先度)を設定します。
インポートした地質平面図および地質縦断図をもとに地層境界線をトレースしていきましょう。インポートしたラスターオブジェクトを描画セクション(描画する平面)に設定すると便利です。私は、下図のように8本の線を引きました。

地質平面図上で境界線をトレースする場合、同じ平面に複数の線を引くため高さが一律になってしまいます。そこで、Geo-Graphiaの高さ変更の機能を用いて、それぞれのポリラインを先に作成した地形面(サーフェス)の高さとなるように変更します。

地質縦断図では、境界が記載されている部分はもちろんですが、記載のないエリア(図から外れている部分など)の境界も可能な限り描画したり、全体のイメージに沿った伸長をしたほうがいいと考えています。推定したモデルに納得できない場合は、再度境界線を引き直すなど、何度でも修正が可能ですので、一度、仮の線を引いてみて全体のバランスなどを見ながら調整してもいいと思います。

私の場合、この時、地層の累重も少し考えました。小仏層群と愛川層群との境界、愛川層群と丹沢層群との境には、それぞれ藤ノ木-愛川構造線、牧馬-煤ケ谷構造線が存在しています。その構造線を描き、そこを境に各層が分布するようなイメージを持ちました。

地質推定のために地質境界線をトレースして推定線を引く
地形図上の縦断図を配置した場所に推定線を引くイメージ

(2)境界面を設定しよう

境界線として引いた線に対して、境界面を設定します。この設定により「プライオリティ(優先度)」の設定と「制約」機能を用いて「切る」「切られ」関係を表現することができます。
プライオリティは、優先する順番を示します。数が小さければ小さいほど(3から1000まで登録が可能)、その面で作られた地層は他の地層に対して優先されます。
制約は、連続していた地層が断層面など、ある面で止まる場合(切られる場合)に使われます。本来、その断層や構造線境界付近は、断層活動によってダメージをうけた層がある程度の厚さで挟在する場合があります。モデルとしては、その部分までを考慮する場合もしくは、考慮しない場合のどちらかを考える必要があります。その判断は、難しいところですが、私の場合”どのような目的でモデルを作るのか”という観点を基に決めています。また、かなり薄い層を作るのは、モデル作成上の限界もあります。
今回は、広範囲のモデル化ということもあり、薄い層を表現することが難しいことから、今回の牧馬―煤ケ谷構造線、藤野木―愛川構造線は、この「厚みを表現しない方法」で作成してみたいと思います。

境界線を境界面設定に登録し、推定を実行した結果、下図のようなモデルができました。
全体の一部分だけのモデルですが、このエリアの基盤となる地層の分布・傾向が見て取ることが出来ます。
西側に向かうと地表面から顔を出し丹沢山地を形成し、その一方、東側に行けば行くほど、分布深度は深くなります。この上に、上総層群、相模層群、沖積層といった海底で堆積した砂、泥、河川で堆積した砂、礫、火山灰が降り積もったローム層などがぶ厚く堆積しています。

左:地質平面図と推定した地質構造モデルを表示 右:推定した地質構造モデルのみを表示
左:推定線と地質構造モデル表示(高さ倍率1.5) 右:推定した地質構造モデル(高さ倍率1.5)
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