技術資料
Feel&Think
第13回 非排水条件で等方圧を加えた場合
今回は、岩石試料からの水の出入りを禁止した非排水条件で、等方圧を加えた場合の岩石の挙動を見て行きます。最初は、等方圧に対する体積ひずみの変化です。
図-1がそれですが、前回示した排水条件での結果に比べ、非線形性が小さくなっていることがわかります。等方圧の増分と体積ひずみの増分から、非排水条件での体積弾性定数を求めたものが図-2です。等方圧の大きさにかかわらず、ほぼ一定の値が得られています。
排水条件での実験では、等方圧の増加に伴って空隙の閉鎖が生じ、接触面積が大きくなることから内部の応力が小さくなり、見かけ上体積弾性定数が大きくなっていくと考えられました。また、間隙水圧を増加させていくと、逆に空隙が開口していき見かけ上体積弾性定数が小さくなっていきました。非排水条件で等方圧を加えて行った場合には、空隙中に水が存在しこれが空隙の開閉を阻むことから、有効面積が一定に保たれ、この結果体積弾性定数がほぼ一定値となっていると考えられます。
等方圧を加えた際の間隙水圧の変化を、図-3に示します。等方圧にほぼ比例して間隙水圧が変化していることがわかります。図-4には、等方圧の増分に対する間隙水圧の増分の割合を示しました。等方圧の増加に伴い、割合はやや減少する傾向が見られます。
前回同様に、非排水条件での体積成分に関する構成方程式を示します。
Kuは、非排水条件で計測された体積弾性定数です。また、等方圧の増分に対する間隙水圧の増分の割合をβとすれば、
となります。
一方、前回示した構成方程式では、排水条件に係わらず成り立つ式として、
を示しました。Kd は、排水条件で計測される体積弾性定数という意味です。
二つの式からは、非排水条件の体積弾性定数が次のように表されます。
二式を比較すると、次の関係があることがわかります。
実験結果をもとに β を求め、前回までに得られてKd とα からKu を推定してみました。なお、Kuと β は、等方圧を増加させていく過程での、最大圧の半分の時点での値としました。結果を表-1に示します。同表で、Ku は実験で得られた値でありKu*は推定値です。実験値と推定値はほぼ一致しており、構成方程式が実現象をうまく記述していることがわかります。
次回では、α や β の値と岩石の構造との関係を、筆者の考えた岩石モデルを使い説明していきたいと思います。