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第12回 等方圧と間隙水圧に対する変形

担当:里 優
2017.12

これまで、三軸圧縮試験により偏差的な応力状態における岩石の挙動を調べ、これに基づいて岩石内部で生じている破壊やクラックの成長を理論的に検討してきました。本シリーズでは、最終的に三軸圧縮試験における岩石の挙動を表現できる構成方程式(応力とひずみの関係を表す理論式)を作ってみたいと考えています。ただしこのためには、どうしても等方圧や間隙水圧に対する岩石の変形挙動を知っておくことが必要となります。

そこで今回からは、水で飽和した二種類の岩石試料を用い、等方圧や間隙水圧を加えた三軸圧縮試験の結果を紹介し、これを明らかにしていきたいと思います。近年では、岩盤の変形と地下水の流れを同時に解く連成解析が一般的になってきましたが、このような解析を行っている方にも参考になると思います。

まずは、間隙水圧を一定に保ち、等方圧を増加させていったときの結果をご覧ください。図-1が加えた等方圧に対する体積ひずみの変化です。両岩種とも多少の非線形性はありますが、等方圧の繰り返し載荷に対して体積ひずみが同じ経路を辿っています。等方圧の増分を体積ひずみの増分で除して、体積弾性定数を求めたものが図-2です。図-1に示したグラフの、接線の傾きから求めたことになります。等方圧が大きくなると体積弾性定数が大きくなる傾向にありますが、これは空隙の閉鎖により岩石内部の接触面積が増加し、岩石内部の応力が低下するためと考えます。計測している等方圧の増分が同じであっても、岩石内部の応力増分が小さく、この結果ひずみ増分が小さくなるために、見かけ上体積弾性定数が小さくなるわけです。繰り返し載荷においても、応力-ひずみ線図が同じ経路を辿っていることから、岩石内部では破壊などは発生せず弾性的に挙動していると考えられます。

図-1 等方圧と体積ひずみの関係
図-1 等方圧と体積ひずみの関係
図-2 等方圧と体積弾性定数の関係
図-2 等方圧と体積弾性定数の関係

このときの排水量と加えた等方圧の関係を図-3に示します。載荷過程では間隙水が等方圧に比例して押し出されてきますが、除荷過程では押し出された分までは間隙水が吸込まれません。これは、試料の透水性が低く除荷の速度に吸い込みが付いていけないためだと考えられます。

図-4には、岩石試料の体積変化と排水量の関係を示しました。ここでも、載荷の過程では体積変化と排水量は線形に変化するのに対し、除荷過程では吸い込みが間に合っていないようです。体積変化の増分に対する排水量の増分の割合を、図-5に示しました。載荷の過程では値がほぼ1となっており、体積変化が空隙の変化によって生じていることがわかります。

図-3 等方圧と排水量の関係
図-3 等方圧と排水量の関係
図-4 体積変化と排水量の関係
図-4 体積変化と排水量の関係
図-5 等方圧と体積変化/排水量の関係
図-5 等方圧と体積変化/排水量の関係

次は、等方圧を一定に保ち、間隙水圧を変化させた場合の実験結果です。加えた間隙水圧と体積ひずみの関係を図-6に示しました。等方圧を変化させた場合に比べ、非線形性は弱く繰り返し載荷に対しても弾性的に挙動しています。このときの間隙水圧の増分を体積ひずみの増分で除して体積弾性定数相当の値を求めたものが図-7です。三城目安山岩では、間隙水圧が大きくなると体積弾性定数が小さくなる傾向が強いことがわかりますが、これは等方圧を加えた場合の逆で、空隙が開口して岩石内部の接触面積が小さくなるためと考えられます。

図-6 間隙水圧と体積ひずみの関係
図-6 間隙水圧と体積ひずみの関係
図-7 間隙水圧と体積弾性定数の関係
図-7 間隙水圧と体積弾性定数の関係

さて、これを構成方程式の形で書き表すと、次のようになります。

数式1

K1は間隙水圧を一定に保ち(Δφ=0)、等方圧を増加させた場合に計測される体積弾性定数、K2は等方圧を一定に保ち(Δσm=0)、間隙水圧を増加させた場合に計測される体積弾性定数です。ここでは、両方とも等方圧や間隙水圧の大きさに係わらず一定と近似します。体積ひずみΔεv は、これら2つの圧力を加えた場合のひずみの和となります。 式を少し変形して、

数式2

数式とすれば次式が得られます。

数式3

これが、岩石の体積成分に関する構成方程式となります。Kdは、排水条件で計測される体積弾性定数という意味です。

実験結果をもとに、αを求めてみたものが表-1です。実験結果はある程度の非線形性を示していますので、体積弾性定数としては、圧力を増加させていく過程での最大圧力の半分の時点での値を用いました。

表-1 実験により得られた体積弾性定数

表を見ると、K1よりK2が大きいことがわかります。この結果、αは1より大きな値となります。なぜこうなるかについては、次回の非排水条件での実験結果を見た後に、回を改めて解説したいと思います。

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