技術資料
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第2回 三軸圧縮試験について
Rock Mechanicsを研究する上で、大切な手段の一つが岩石の三軸圧縮試験です。Rock Mechanicsは岩盤を相手にした学問ですが、地下深くの岩盤に直接力を加えたり間隙水圧を変化させたりして、このときの反応を調べることは容易ではありません。そこで、深い地下と同様な圧力や温度環境を室内に作り出し、ここに採取してきた岩石をおいて、その挙動を詳細に観察しようとするのが三軸圧縮試験です。
岩石の三軸圧縮試験に使う装置は見たことがないという方のために、今回は少し詳しく説明したいと思います。図-1が、今回のシリーズで紹介する実験に用いた圧力容器のイラストです。三軸圧縮試験では、圧力容器内においた円柱形の岩石試料に対し、軸方向からは鋼棒を介してアクチュエータで力を加え軸応力(σ1)を発生させ、周方向からは油圧で拘束圧を加えて周方向応力(σ2=σ3)を発生させます。図の圧力容器では、岩石試料に拘束圧を最大50MPa、間隙水圧を最大50MPa加えることができます。これは、岩石を地下2,000~2,500m程の圧力環境下においたことになります。国内で最大の圧力を加えることができる装置は産業技術総合研究所のもので、何と拘束圧500MPa、間隙水圧200MPa、温度300℃の環境を作り出すことができます。これは地下15km~20kmに相当し、この装置を使って地震の発生過程の解明などを目的とした基礎研究が行われています。
岩石の挙動を調べるために、岩石試料にはさまざまなセンサが貼付されますが、これらからの計測線は圧力容器から取り出す必要があります。高い油圧や温度が作用する圧力容器に穴をあけ、ここから油が漏れださないようにしながら計測線を取り出すために、圧力容器の設計には多くの工夫が詰まっています。今回のシリーズで紹介する実験に用いた圧力容器では、最大で84本の計測線を取り出すことを可能としています。
図-2には、岩石試料に各種のセンサを貼付し、シリコンゴムでシールした実験供試体を示しました。拘束圧を加えるために油圧を使いますが、この油が岩石試料に入り込まないようにするためです。この段階に来るまでに、岩石試料の円柱形への整形、センサの貼付、必要に応じた水での飽和作業、シリコンゴムでシールなど、多くの慎重な作業が必要です。一つの供試体の作成に1か月以上かかることも珍しくありません。本シリーズでは、40条件ほどの実験結果をご紹介しますが、実験は1条件で3つ以上の岩石試料を使って行っており、これらの内の平均的な挙動をした岩石試料での結果を示しています。予備実験や失敗した実験の含めると、この成果を得るために200回以上の実験が行われています。
実験では、供試体を圧力容器にセットした後、最初に軸応力と拘束圧を同じ大きさで加え、岩石試料を等方的な応力状態(初期等方状態)とします。次に、軸応力だけを増加させていき偏差的な応力状態にします。軸応力と拘束圧の差を「軸差応力」と呼ぶこととしますが、この軸差応力に対する供試体の挙動を調べることが三軸圧縮試験の主な目的です。
等方的な応力状態では、理論的には岩石試料中に破壊現象は発生しません。後の回で示しますが、軸差応力の増加に伴い局所引張応力が発生し、岩石中に割れが発生していきます。この様子を目で見ることはできないので、いろいろなセンサで岩石内部で生じている変化を捉えます。図-3に示すように、ひずみゲージで岩石の微小な変形を計測し、圧電素子でAE(微小破壊音)を捉えます。また、一対の圧電素子を用い、一方から弾性波を発生させ、もう一方でこれを受けて弾性波速度を計測します。乾燥状態の岩石試料では、軸方向と径方向の両方で弾性波速度を計測しました。飽和状態の岩石試料では、圧力センサで間隙水圧を計測します。また、試料からの排水量も計測します。本シリーズで紹介する三軸圧縮試験装置における載荷と計測の仕組みを、図-4にまとめて示します。
さて、次回からはいよいよ実験の結果をご紹介していきます。