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第7回 地盤変形と地下水の関係
今回からは、より具体的に地盤変形と地下水の関係を調べていきたいと思います。ただし、この過程でどうしても地盤変形と地下水の関係式に触れることになります。そこで今回は、Biotの研究に代表される間隙弾性論を紹介し、関係式の意味などを考えてみたいと思います。
間隙弾性論では、地盤の体積ひずみ εv は平均応力 σm と間隙水圧にPより変化すると考えます。なお、応力とひずみ、間隙水圧は圧縮を負とします。
ここに、Kは排水条件(Δp=0)での等方応力載荷実験で得られる体積弾性定数であり、
Hは平均応力変化が無い状態(Δσm=0)で、間隙水圧を変化させた場合の体積ひずみの大きさを規定する実験定数です。
αを次のように定義すれば、
式(1)は以下のように記述できます。
式(8)はいわゆる有効応力則であり、αは有効応力係数とも呼ばれます。αは1~0の値を取り、一般には1に近い値です。
間隙弾性論では、平均応力や間隙水圧が変化することで生じた間隙水の体積変化(単位体積中を出入りした間隙水の体積)をとすると、次式が成り立つと考えます。なお、間隙水の排出を正とします。
ここに、RはBiotにより導入された間隙弾性定数であり、平均応力を変化させずに(Δσm=0)間隙水圧を変化させた場合の、出入りした間隙水の体積を規定する定数です。
一方Hは、間隙水圧を変化させずに(Δp=0)平均応力を変化させた場合の、出入りした間隙水の体積を規定する定数ですが、式(1)に示すとおり、平均応力変化が無い状態で、間隙水圧を変化させた場合の体積ひずみの大きさを規定する定数でもあります。
このように間隙弾性論では、間隙水圧を変化させずに平均応力を変化させた場合の、出入りした間隙水の体積と、平均応力変化が無い状態で間隙水圧を変化させた場合の体積ひずみは等しいと考えます。
間隙水の出入りを禁止した場合()には、次式が得られます。
式中のBは、スケンプトン定数と呼ばれるもので、間隙水の移動を禁止した(非排水)条件での、平均応力変化に対する間隙水圧変化の大きさを規定する実験定数です。Bは1~0の値を取り、一般には1に近い値です。
次に、次式を計測可能な実験定数K、α、Bで記述してみます。
まず、RとHを書き換えます。
であることから、
有効応力則を考慮すれば
最終的に次式が得られます。
ここで、貯留係数に相当するMを新たに導入すれば、
と書くことができます。
これまで示したとおり、Biotの研究では次の2式が基本となっており、
最終的には、実験可能な定数を用いて次のように記述することができました。
さらに、単位体積中を出入りした間隙水の体積は、間隙水の流れがダルシー則に従うと仮定して次式で与えられます。なお、この場合の Δ は単位時間当たりの増分を表します。
ここに、kは透水係数です。
したがって、間隙水の連続式として次式が得られます。
式(21)と式(26)を連立させて解くのが、変形と間隙水流れの連成解析と呼ばれる解析手法です。
次回からは、この連成解析を使って地盤の変形と地下水の関係を見ていきます。