技術資料

Feel&Think

第12回 斜面のすべり面を推定する

担当:里 優
2021.02

今回のシリーズの締めくくりとして、カルマンフィルタを用いた有限要素法による逆解析を、斜面のすべり問題に適用した例をご紹介します。具体的には、すべり面を複数仮定し、地表面の変形から逆解析によりどのすべり面で変形が発生したのかを推定します。
用いたモデルを次図に示します。黄色と緑及び赤の領域ですべりが発生するものと仮定し、すべり変形はこれらの領域の剛性低下で表現します。

解析モデル例
解析モデル例

最初に、黄色と緑の領域に剛性低下を発生させ、小さい方のすべり面ですべりを起こさせます。このときの地表面の変形からすべりを生じた面を逆解析により推定します。

黄色と緑の領域に剛性低下を発生させたモデル
黄色と緑の領域に剛性低下を発生させたモデル

逆解析の結果を以下に示します。黄色と緑の領域で剛性低下が生じすべりが発生したことが推定されています。

変位分布図(逆解析結果)
変位分布図(逆解析結果)
体積ひずみ分布図(逆解析結果)
体積ひずみ分布図(逆解析結果)

今度は、黄色と赤の領域に剛性低下を発生させ、大きい方のすべり変形を起こした場合の地表面変形を使った場合です。

変位分布図(黄色と赤の領域に剛性低下発生させた場合の地表面変形を用いる)
変位分布図
(黄色と赤の領域に剛性低下発生させ、地表面変形を用いる)

逆解析の結果を以下に示します。黄色と赤の領域で剛性低下が生じすべりが発生したことが推定されています。

変位分布図(逆解析結果)
変位分布図(逆解析結果)
体積ひずみ分布図(逆解析結果)
体積ひずみ分布図(逆解析結果)

これまで紹介してきましたように、カルマンフィルタを用いた有限要素法による逆解析は様々な問題に適用が可能です。この理由は、カルマンフィルタによる定式化の柔軟性と安定した収束性にあると筆者は考えます。是非逆解析をご活用ください。

「カルマンフィルタで逆解析」シリーズは最終回です。次回より新シリーズ「地盤変形と地下水のモニタリング」がスタートします。

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