技術資料
Feel&Think
第11回 剛性の低下率を求める
担当:里 優
2021.01
今回からは、地盤に何らかの原因で剛性の低下が発生した場合の、発生した場所と剛性の低下率を逆解析により推定してみます。
地盤に生ずる剛性の下の原因としては、塑性化や疲労劣化あるいは構造骨格の破壊などが考えられます。剛性の低下を応力‐ひずみ関係で示すと、次のようになります。
ここに、αは剛性低下率、Eはヤング率、ε0は初期ひずみ、σ0は初期応力です。
これをもとに、第5回で紹介した方法で α を状態変数とした状態空間モデルを作成し、変位の推定値f(x)と観測行列Aを求めます。その上で、カルマンフィルタにより α を推定します。
今回も、第8回に用いた次に示すようなモデルを用います。下の段の右から2番目の領域に50%の剛性低下を発生させ、モデルに変形を生じさせます。地表面に配置した観測点におけるこのときの鉛直変位から、逆解析により剛性低下が発生した場所とその大きさを推定してみます。
以下に逆解析の結果を示します。剛性低下の発生している場所は、それほど明確ではありませんが、左側から2列目の領域に剛性低下が生じていることが推定されています。
今度は、上段の左側から2番目の領域で50%の剛性低下が生じた際の変形を用い、逆解析を行ってみます。
結果を見ると、剛性低下を与えた領域近辺に変形が生じており、剛性低下した領域やその大きさがうまく推定されていることがわかります。