技術資料
Feel&Think
第8回 ひずみが発生した場所を見つける
今回からは、地盤内部に何らかの原因で体積ひずみの変化が発生した場合の、発生した場所と体積ひずみの大きさを逆解析により推定してみます。
地盤に生ずる体積ひずみ変化としては、間隙水の排出に伴う圧密、熱膨張や収縮、凍結膨張などが考えられます。このような変化が生じた場所が特定できれば、対策工の選定などに貢献します。
このような体積ひずみの発生を応力‐ひずみ関係で示すと、次のようになります。
ここに、は平均応力、は体積弾性定数、は体積ひずみ、は何らかの原因で発生した体積ひずみです。
これをもとに、第5回で紹介した方法で を状態変数とした状態空間モデルを作成し、変位の推定値と観測行列を求めます。その上で、カルマンフィルタによりを推定します。
今回は、次図に示すようなモデルを用います。青色以外の色の付いた10個の領域の内の一つに収縮の体積ひずみを発生させ、モデルに変形を生じさせます。地表面に配置した観測点におけるこのときの変位から、逆解析により体積ひずみ発生した場所とその大きさを推定してみます。ただし、体積ひずみの変化は10個の領域のどれでも生ずる可能性があるものとします。
まず、下の段の右から2番目の領域に収縮の体積ひずみを発生させ、観測値(地表面の鉛直変位)を設定します。下図では熱膨張係数と記述していますが、単位の温度変化を与えた場合の体積ひずみを表しており、この場合は0.1%の収縮の体積ひずみを発生させることになります。
カルマンフィルタに関連するノイズの分散は、下図のように設定しました。
以下に逆解析の結果を示します。まず変形分布の推定ですが、下の段の右から2番目の領域を中心に、収縮の体積ひずみの発生が推定されています。
また、下の段の右から2番目の領域を中心に、最大0.07%の収縮の体積ひずみ発生が推定されています。
同様に、今度は上の段の左から2番目の領域に収縮の体積ひずみを発生させた場合です。
以下に逆解析の結果を示します。この場合は、変位分布も体積ひずみの大きさもうまく推定できています。
このように、地表面の変形から地下で生じている体積ひずみの変化やその場所を推定することができます。この方法論は、盛土や埋立地の沈下対策検討などに役立つと考えます。