技術資料
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第6回 建物が建設された地盤の揺れやすさを推定
Geo-Stickが設置された建物の1階で計測された最大加速度や計測震度を、最寄りのK-NETの値と比較し、建物の地盤の揺れやすさを推定します。
独立行政法人防災科学技術研究所が運用するK-NET(全国強震観測網)では、地震ごとに各観測点で最大加速度や計測震度などが公表されます。K-NETの観測点は地表面に設置されていることから、これらの値は、地盤中を伝播してきた地震動が地表面に到達した際の、地盤の最大加速度や計測震度であり、地盤の振動特性が反映されたものです。
Geo-Stickが建物の1階に設置されている場合には、観測された加速度時刻歴はK-NETと同様に地盤の振動特性が反映されたものと考えられます。得られた加速度時刻歴より最大加速度や計測震度を求め、これをK-NETの値と比較することで建物の地盤の揺れやすさを推定できる可能性があります。ただし、建物の1階のデータは、基礎や建物の振動特性の影響も受けていることから注意が必要です。
そこで、Geo-Stickが設置された建物に近い3か所のK-NET観測点について、最大加速度と計測震度の平均値を求め、これと建物1階での計測値を比較してみました。
下図には、建物(4階建、RC造)の位置と、最寄り3か所のK-NET観測点の位置を示します。
下図には、この建物で観測された幾つかの地震について、K-NET観測点での最大加速度の平均値、および計測震度の平均値と、建物1階の計測値の関係を示します。いずれのグラフでも、K-NETの平均値と1階の計測値には明瞭な比例関係が認められます。
詳しく見ると、1階の最大加速度はK-NET平均値の1/2程度であり、計測震度はK-NET平均値に比べやや大きな値となっています。このことは、建物が建設された地盤が、基礎などの効果を含め周辺の地盤より揺れにくいことを示しています。
もう1例として、4階建S造の建物で観測された幾つかの地震について、K-NET観測点での最大加速度の平均値、および計測震度の平均値と、建物1階の計測値の関係を示します。この建物でも、K-NETの平均値と1階の計測値には比例関係が認められます。また、1階の最大加速度と計測震度は、ともにK-NET平均値と同程度です。このことは、建物が建設された地盤は周辺の地盤と同様の振動特性を有していることを示しています。
これらのデータからは、次のような点に気がつきます。すなわち、1階の計測震度とK-NET平均値との間に比例関係があることから、これを外挿することで、K-NET平均値で震度6~7(計測震度5.5から6.5)の地震が発生した場合に、1階の計測震度がどの程度になるかを推定することができることです。
2棟の場合を示すと、以下のとおりです。
表-1 K-NETの平均計測震度と建物1階の計測震度
このように、中小地震時のデータを蓄積することで、大地震時の揺れを推定することができます。
次回は、この発想を建物全体の揺れに適用してみます。