技術資料
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第11回 最大層間変形角の概算法の検証
担当:里 優
2019.11
前回検討した、多質点系モデルによる建物の最大層間変形角の概算方法の妥当性を、小型振動台を用いた建物モデルの加振実験結果と比較し検証しました。
多質点系モデルによる最大層間変形角の概算方法では、各階で計測された最大加速度をa、各階の固有周期をTとして、n階建てのl階における最大層間変形δlの概算値を次のように求めます。

ただし、建物は弾性的に挙動し、各階の剛性や重量が同じであり、減衰が無く、各階で最大加速度が同時に同方向に生じたことを前提としています。1階あたりの固有周期Tは、建物全体の(1次の)固有周期Tpより推定することとします。

この概算方法を、小型振動台上に2階建ての建物モデルを構築して加振実験を行い検証してみました。各階にはGeo-Stickを設置し加速度を記録するとともに、レーザ変位計で各階の変形も記録しています。

加振波形を変えて実験を行った結果を以下に示します。実測された最大層間変形に対し、概算値は最大40%程度の誤差範囲に収まっていることがわかります。また、実測値に対し概算値は常に大きな値となっています。これは、概算値を求める前提として、各階の最大加速度が同時刻に同方向に作用するとしていることに起因します。実際にはこのような状態となることは稀であり、概算値は実測値より大きな値となりますが、建物の健全性を推測するために用いる上では、安全側の値となります。
ここで示した方法では、建物に最低1個のGeo-Stickが設置されていれば概算値が得られます。固有周期は卓越周期より推定し、各階の最大加速度は計測値と同一と近似します。得られ値の精度は低くとも、まずはGeo-Stickを設置して計測してみることに意義があると考えます。
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

