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第7回 K-NETに見るH/Vスペクトル比の特徴
前回で説明したとおり、地震時に地表面で計測された加速度時刻歴データより求められたH/Vスペクトル比は、地盤の性状を反映していると考えられます。そこで、K-NETのデータを用いてH/Vスペクトル比を求め、その特徴を調べました。
検討に先立ち、K-NETのデータを読み込んで処理し、素早く図化して閲覧ができるように、図-1のようなソフトウェアを開発しました。このソフトウェアでは、K-NETの観測点を指定すると、半径100km以内に震源がある地震全てについて加速度時刻歴データを読み込み、距離減衰式に基づく理論最大加速度と計測最大加速度の関係を相関図にプロットします。
このプロット全体で直線回帰式を求め、理論最大加速度に対する計測最大加速度の倍率を算定します。この方法論は、本シリーズ第3回から第5回で説明したとおりです。次に、一つの地震を指定しH/Vスペクトル比を求めます。
指定された3成分の加速度時刻歴データは、それぞれについて振幅スペクトルを求めた後、0.4HzのParzon窓関数により平滑化を施し、次のようにH/Vスペクトル比を求めました。
EW:東西方向のスペクトル、NS:南北方向のスペクトル、UD:鉛直方向のスペクトル
図-2に、K-NETの観測点の一つである川崎(KNG001)の加速度時刻歴データより作成したH/Vスペクトル比を示します。5つの地震について求めたものですが、全てのH/Vスペクトル比が0.5~1秒の間でピークを持ち、ピークの周期や大きさはやや異なるものの類似した形状であることがわかります。このことは、H/Vスペクトル比が地震動に依らない地盤の特性を表していることを示しています。
次回は、このスペクトル比の形状が地盤の性状によって異なることを、K-NETが提供するデータをもとに示します。