技術資料

Feel&Think

第2回 圧密問題を題材として

担当:里 優
2025.03

今回は、地下水流れと変形の連成現象の典型例である圧密問題を題材として、連成現象の特徴を説明します。また、独自に開発した3次元連成解析プログラムG-SUPRAを用いて、理論解と解析結果を比較してみます。G-SUPRAは、動的緩和法と前進差分法を用いて連成解析の支配方程式を解いています。G-SUPRAが用いている解法の詳細は、下記をご覧ください。

>>技術資料 FeeL&Think[陽解法のすすめ]

■圧密方程式の誘導

まずは、連成解析の支配方程式から、一次元弾性圧密方程式を求めます。

数式1-3

ここでは、Δは時間増分∂/∂t を表すこととします。
有効応力式(1)を、圧密方向の主応力増分Δσ1と主ひずみ増分Δε1で表します。一次元圧密問題では、圧密方向の成分にのみ興味があるためです。このために有効応力を、

数式4

としたうえで、有効応力-ひずみ関係を記述します。

数式5

1次元圧密問題では、Δσ2=Δσ3 および Δε2=Δε30 であることから

数式6

となり、

数式7

より最終的に次式が得られます。

数式8

K1 は、1次元圧密問題における体積弾性定数ということができます。
圧密途中では、Δσ10 であることから

数式9

であり、式(2)より次式が得られます。

数式10

p を静水圧状態からの増分(過剰間隙水圧)とし、x および y 方向には p が一様であるとすれば、以下のように1次元圧密方程式が得られます。

数式11

■間隙水圧、圧密変位の理論解

1次元圧密方程式に関し、層厚Hの地盤で片面排水条件とした場合には、境界条件を考慮して次のような理論解が得られます。

数式12-14

ここに、pz の高さにおける過剰間隙水圧、U は平均圧密度、u0 は上載荷重を加えた際の上面の瞬時変位、uf は最終変位です。

■瞬時変位と最終変位

圧密問題では、上載荷重により過剰間隙水圧が発生し、これが消散するまでの変位を求めます。土を対象とした圧密問題では、水を剛体として取り扱うため、上載荷重を加えても瞬時変形は発生しませんが、ここで取り扱う連成解析では瞬時変位が発生します。この値を求めてみます。
上載荷重が加わった瞬間は間隙水の移動はなく(非排水条件)、

数式15

であることから、有効応力式、

数式

は次式となります。

数式16

ここで、非排水条件での体積弾性定数をKuとします。

数式17

さらに、非排水条件でのヤング率Eu 、ポアソン比 νu を使って記述すると次のようになります。

数式18

一方、せん断弾性定数Gは、水のせん断剛性がほぼ0であるため間隙水圧の影響を受けず、非排水条件でも同じ値となります。

数式19

これらより、Euνu は以下のように表されます。

数式20,21

次に、非排水条件での有効応力式(17)を、圧密方向の主応力増分Δσ1 と主ひずみ増分Δε1 で表します。まず、非排水条件での弾性定数を用いて、応力-ひずみ関係を記述します。

数式22

圧密問題では、Δσ2=Δσ3 および Δε2=Δε3=0 であることから平均応力は次式となります。

数式23

式(17)に代入して、

数式24

となることから、

数式25

として次式が得られます。

数式26

瞬時ひずみは層厚に対して均等に発生することから、瞬時変形は

数式27

で求めることができます。
圧密後の最終ひずみも層厚に対して均等に発生することを考慮し、有効応力式

数式

Δp=0 と置くことで得られます。

数式28

■上載荷重による過剰間隙水圧の発生

上載荷重により発生する過剰間隙水圧は、B値によって規定されます。

数式29

このときは非排水条件であることから、式(23)より

数式

であり、発生する過剰間隙水圧は次式となります。

数式30

■理論解と解析結果の比較

理論解をもとに圧密問題の特徴を調べるとともに、G-SUPRAの解と理論解を比較しG-SUPRAの性能を評価してみます。
用いた3次元モデルを下図に示します。側面と底面は法線方向の変位を拘束し、また非排水境界とします。上面からは上載圧を均等に、かつ瞬時に加えます。これで、圧密現象は1次元的に生じます。

解析モデル図

用いた解析条件を下表に一覧します。

解析条件一覧表

下図に、圧密中の変位と間隙水の流速ベクトルを示します。上面からの排水に伴って、圧密変位が進行することがわかります。

圧密中の変位分布図と圧密中の流速ベクトル分布図

以下に、αとB値を変化させて行った解析結果と理論解を示します。瞬時変位、圧密中の変位、最終変位、間隙水圧の変化のいずれも、G-SUPRAによる解析結果と理論解は良い一致を示しています。

上面変位グラフ(理論解α=1,B=0.999)
上面変位グラフ(理論解α=1,B=0.8)
上面変位グラフ(理論解α=1,B=0.5)
上面変位グラフ(理論解α=0.8,B=0.8)
上面変位グラフ(理論解α=0.5,B=0.8)
中央部の間隙水圧グラフ(理論解α=1,B=0.999)
中央部の間隙水圧グラフ(理論解α=1,B=0.8)
中央部の間隙水圧グラフ(理論解α=1,B=05)
中央部の間隙水圧グラフ(理論解α=0.8,B=0.8)
中央部の間隙水圧グラフ(理論解α=0.5,B=0.8)

■考察

これまで示した結果からは、連成現象としての圧密問題における、次のような特徴を読み取ることができます。

  • αが1、B値が1(ここでは式(3)で0割が発生するため0.999)の場合は、水を剛体として取り扱った場合に相当し、瞬時変形はほぼ0となる。
  • αとB値が小さくなると瞬時変形が大きくなり、初期過剰間隙水圧が小さくなる。

次回は、いよいよ疑似連成解析について説明してきます。

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