技術資料
Feel&Think
第2回 AIの歴史
前回の「AIとは」では、AIの一般的な定義をはじめ、実際にどのようにAIの技術が使用されているかを、最も身近な「自動運転技術」や、内閣府の「ムーンショット」を例に挙げ説明しました。
今回の第二回目は、AIの歴史について、説明していきたいと思います。まず初めに、AIの概念を最初に考案したのはだれでしょう?
答えは、アラン・チューリング※1という人だそうです。
アラン・チューリングは、“電子計算機の黎明期の研究に従事し、計算機械チューリングマシンとして計算を定式化して、その知性や思考に繋がりうる能力と限界の問題を議論するなど情報処理の基礎的・原理的分野において大きな貢献した人物-Wikipedia-”であり、「チューリングマシン」という計算を行う自動機械の数学的なモデルがよく知られています。
※1:アラン・チューリング「ウィキペディア (Wikipedia): フリー百科事典」最終更新 2023年2月14日 (火) 14:11
それでは、「AI: Artificial Intelligence」という単語が最初に現れたのはいつでしょう?
答えは、1965年の「ダートマス会議※2」でジョン・マッカーシーが提出した提案書で使用したのが始まりと言われています。
このダートマス会議とは、選ばれた10人の工知能研究者がダートマス大学に集まり夏季のいろいろな時期に1週間程度のワークショップにおいて、個々の人工知能の研究(基礎的な研究から応用まで)に対する研究報告会を行ったといわれています。
※2:ダートマス会議「ウィキペディア (Wikipedia): フリー百科事典」最終更新 2022年4月5日 (火) 04:00
AIの歴史を見ていくと、順調に発展しているわけではないようです。
よく耳にするのは「ブーム」と「冬の時代」です。これまで、3回ほど繰り返し、現在に至っています。
■第一次AIブーム
第一次AIブームは、1950年代後半~1960年代になります。このブームでは、「探索」や「推論」といった技術により、パズルや迷路などの簡単な問題への答えを提示できるようになり、期待が膨らみました。しかし、現実社会における複雑な課題を解決することが困難であることが分かり、AIへの失望感から冬の時代となります。
この時代には、人工無能※3の起源となったソフトウェアである「ELIZA(イライザ)」がジョセフ・ワイゼンパウムによって作成されました。このELIZAは、簡単なパターンマッチング技法を使用した自然言語処理プログラムでしたが、そのやり取りは、感情がこもった応答だったため、人々は驚き感銘を受けました。このELIZAは、現代でいうチャットボットの先駆けといえるでしょう。
※3人工無能:人間的な会話の成立を目指した人工知能に類するコンピュータプログラム
■第二次AIブーム
第二次AIブームは、1980年代になります。このブームでは、「ルールベース」と「知識ベース」のエキスパートシステムに注目が集まりました。このエキスパートシステムは、特定の問題に対して、専門家や職人であるかのように回答するようなシステムです。仕組みそのものは、専門家や職人の様々な知識判断の過程にIF-THENルール(もし~ならば・・・である)が適用された単純なものになります。この手法は、そもそも専門家などの暗黙知をベースに作成されているため、説明可能性が高いものでした。
しかし、エキスパートに入力する専門家などの暗黙知は、状況によっては膨大な量になり、かつ言語化が難しい場合も多かったため、研究者たちは、知識獲得困難だと感じ、徐々に使用されなくなっていきました。これが、第二のAIの冬の時代です。
この時代に構築された代表的なエキスパートシステムには、Dendaral(スタンフォード大学で開発された未知の有機化合物を質量分析法で分析し、有機化学の知識を使って特定)やMycin(スタンフォード大学で開発された伝染性の血液疾患を診断し、抗生物質を推奨するようにデザイン)があります。
■第三次AIブーム
第三次AIブームは、2000年代から現在までになります。このブームになるためのきっかけとして、以下の3つが挙げられます。
一つ目は、「ビックデータ」という膨大な情報になります。
二つ目は、「ムーアの法則※4」によりCPUやGPUなどのコンピューターの性能が急激に向上したことです。これら要因により、従来よりもはるかに簡単にビックデータを管理、利用することができるようになりました。
最後の一つは、2012年のILSVRC(ImageNet Large Scale Visual Recognition Challenge)という画像認識の精度を競うコンペで、トロント大学のジェフリー・ヒントン率いるチームが「ディープラーニング※5」という技術を用いたAlexNetが2位以下に大差をつけて優勝したことです。これは、ディープラーニングの技術が、人の手で作られていた特徴量を自動で作成するという点で従来の機械学習よりも優秀であることが認められた最初の事例になります。
その後、ディープラーニングは飛躍的に進化を遂げ、2023年現在ではその進化のスピードを上げ、OpenAIが開発したChatGPTなどの大規模言語モデル(LLM)の公開などがあり、あらたな第4次ブームの幕開けだといわれるようになっています。
※4:半導体回路の集積密度は1年半~2年で2倍となるという法則
※5:脳の神経回路のしくみを模したニューラルネットワークを多層に重ねることで、学習能力を高めた機械学習の手法の一つ
話は変わりますが、2022年9月に話題となった画像作成AI「Midjourney」を試してみました。
なぜ、話題になったかというと、アメリカ・コロラド州で開催されたアートコンテストにおいて画像作成AI(Midjourney)で作成した絵がデジタルアーツ部門の1位を獲得したことが報じられたからです。この絵は、いろいろな意味で物議をかもしています。
Midjourneyとは、誰でも簡単に、芸術的な絵が描けると話題になっているAIの一つです。
下図は、私が以下の英語を入力して、Midjourneyで作成した画像です。
「out of place artifacts, 4k, highquality, –ar 16:9」
このようにたった数単語で高品質の絵を作成してくれます。
このMidjourneyは、2021年のOpenAIのDALL-E 、DALL-E2やgoogleのGLIDE、Imagen、Partiと同じ画像生成AIの一つです。画像生成AIの詳しい仕組みについては別の回で説明したいと思います。
第3回は、機械学習とAIについて説明します。
参考資料
・起業ログ/Midjourneyの使い方とコツ(記事更新日: 2023/02/14)
※上記コラム内のWebサイトの最終参照日は2023年5月