やわらかサイエンス

輝く砂粒 -砂粒の資源-(前編)

第143回担当 : 藤原 靖(2022.12)

輝く砂粒というと砂金でしょうか。砂粒の資源というものがあり、身近なものは公園の砂場で磁石を使うとくっついてくる砂鉄です。実はその他にもたくさんの砂粒の資源があります。

「東京大学物性研究所は2022年9月8日、北海道苫前(とままえ)町で採取した白金族元素の粒子である「砂白金」からプラチナを主成分とする新種の鉱物を発見した。」という記事を見つけました。見慣れない、耳慣れない言葉、砂白金(さはっきん)とあります。砂金があるのだから砂白金もあるのは、何ら不思議ではありませんが。そこで今回は、いろいろな砂粒の資源について見てみたいと思います。


- 日本の砂白金 -

日本の砂白金にまつわる話として、万年筆のペン先にあるペンポイントに使う金属に関する記事がありました。
北海道深川市の北東に位置する鷹泊地区の雨竜川上流では、そのむかし砂金が取れたそうです。しかしこの周辺の砂金には銀色の粒の鉱石が混じっており、この銀色の鉱石は溶鉱炉でも溶けにくいため、砂金と選別する必要があったそうです。銀色の鉱石の粒はシロと呼ばれ、選別が必要なため嫌われていたそうです。しかしシロは、大正時代になると万年筆の普及とともにペン先に取り付ける球体「ペンポイント」の材料として一躍脚光を浴びたそうです。


この銀色の鉱石の粒は、プラチナ(白金)の一種、イリドスミンと呼ばれる砂白金です。イリドスミンは、イリジウム(Ir)が40%とオスミウム(Os)が17~45%の天然合金で、少量の白金(Pt)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)などを含む鉱物です。
イリドスミンは、硬さは金属ではトップレベルで、酸に強く錆びにくい金属です。イリドスミンは、ペンポイントだけでなく兵器や精密機器に欠かせないレアメタルとしての需要が高まり、大正から昭和にかけて活発に採取が行われましたが、やがて終戦とともに途絶えました。採取地は、現在ではダム建設により水底に沈んでいるそうです。


砂白金の2つの採取地と万年筆の能力発揮に不可欠なペン先のペンポイント

左:砂白金の2つの採取地(深川市と苫前町)
右:万年筆の能力発揮に不可欠なペン先のペンポイント

冒頭に紹介した記事は、東京大学物性研究所が、北海道苫前町で採取した白金族元素の粒子である砂白金から、プラチナを主成分とする新種の鉱物を発見したという内容のものです。同研究所では北海道北西部を調査して8カ所で砂白金を採取し、苫前町の海岸で採取した砂白金に最大20マイクロメータ程度の微粒子があり、プラチナと銅が1:3の比率で含まれていたとのことです。この砂白金は「苫前鉱(とままえこう)・Tomamaeite」と命名されました。


発見された砂白金を研究することは、触媒や電極など工業的に重要な役割を持つプラチナが、天然でどのように存在しているかを示す重要な手掛かりになるとのことです。
白金は宝飾や通貨としての利用の方が私たちには馴染みがありますが、工業分野では触媒としての利用が非常に盛んで、工業技術には欠かせない金属です。特に自動車の排気ガスの浄化触媒として多く使用されています。また白金族元素は、水素化反応の触媒としても利用されるため、燃料電池への活用も盛んなのだそうです。白金族元素は、これまでもこれからも環境浄化や新エネルギー分野での活躍が期待される金属です。


左:苫前町の調査地域で得られた砂白金(左右3cm)・ITmedia NEWSより抜粋と右:アメリカ カリフォルニア州のユバ川の砂金・東京大学物性研究所「電子顕微鏡室/Electron Microscope Sectionの自然金」より抜粋

左:苫前町の調査地域で得られた砂白金(左右3cm)・ITmedia NEWSより抜粋
右:アメリカ カリフォルニア州のユバ川の砂金・東京大学物性研究所
  「電子顕微鏡室/Electron Microscope Sectionの自然金」より抜粋

東京大学物性研究所には、「電子顕微鏡室/Electron Microscope Section」という物質設計評価施設のスタッフにより運営されているホームページがあります。電子顕微鏡室では、透過型・走査型電子顕微鏡を用いて、物質の組織・構造・組成・欠陥などをナノスケールで観察し、合成・天然を問わず固体物質の性質を明らかにすることを目的として活動されています。その中に「自然金」について非常に美しい電子顕微鏡の画像とともに紹介されています。前出の雨竜川を含めて35試料の画像の神秘的な美しさを是非一度ご覧ください。
なお、電子顕微鏡の透過型は、試料を電子線が透過するほど薄い切片にして透過した電子線を検出して結像するもので、試料の内部の様子を詳細に観察できます。走査型は、試料の表面に電子線を照射して反射してくる電子線を検出して結像する方法で、試料の表面の状態を詳細に観察できます。

前編では、日本の砂白金という珍しい砂粒について紹介しました。このような砂粒の資源は、どのようにしてできるのでしょうか。中編では、砂粒の資源という観点から金やダイヤモンドなど、あるいはアルミニムやニッケルなどの2つのタイプの鉱床について紹介します。