やわらかサイエンス

石と水から作るコンクリート~時代の移り変わりとともに~(中編)

第136回担当:藤原 靖(2022.5)

前編ではセメント、モルタル、コンクリートの違い、セメントの材料やセメントは国作りの基礎であることについて紹介しました。中編では、もう1つのコンクリートの重要メンバーである骨材の種類や品質と多種多様なセメントの種類について紹介します。


- 骨材の材料は石 -

細骨材となる砂は河川から採取した川砂が一般的でした。資源の枯渇や河川環境の保全などで川砂の採取が制限される中での需要に応えるため、海砂が使われるようになりました。海砂は海水が残留するため除塩が必要です。過去には除塩が不十分なため、コンクリートの中にある鉄筋が錆びるなどの問題を起こしました。


粗骨材も砂と同じく河川から採取する円い砂利が一般的でしたが、需要増加に応えるため、岩を砕いて作る砕石が使われるようになりました。砕石は角があるため、円い砂利とはコンクリートの性質、とくに柔らかい状態の性質が違ってきます。そこで砕石に適したいろいろな工夫がなされています。



左:砂利の外観(石に丸みがあり色も多様)  中:砕石の外観(石の角が尖っていて色が単調)
右:コンクリートの劣化の様子(不良な骨材でコンクリートに亀甲状のひび割れが発生)

砂も石も岩を砕いて作る場合は、もともとの石の性質によっては思わぬ品質への悪影響が出ます。その1つの例が、アルカリ骨材反応と呼ばれるものです。コンクリートの中は、アルカリ性の水溶液で満たされていますが、そのアルカリと骨材中の一部の鉱物とが反応し、膨張性の物質が生成され、骨材内部や骨材周囲に膨張圧が発生してひび割れを生じます。
もう1つの例は過早凝結と呼ばれるものです。アルカリ性の水溶液中のアルカリと骨材中の粘土鉱物とが反応して、セメントの水和が異常に早く進んでしまうものです。


- セメントの種類は大きく3つ -

 一般的なセメントはポルトランドセメントといい、成分はクリンカと石こうです。ポルトランドセメントがセメント市場の70%くらいを占めています。次に多いのがポルトランドセメントに混合材料を混ぜた混合セメントで、高炉セメントと呼ばれる混合セメントが20%を占めています。
その他は、特殊な用途、特殊な環境に用いられる特殊セメントになります。例えば高速道路の夜間応急復旧に使う超速硬セメントや歯科セメント・リン酸セメントなどがあります。



「ポルトランドセメント(Portland cement)」は、その固まったものがイギリスのポルトランド岬から産出されるポルトランドストーンという建築材に似ていることが名前の由来です。

石膏を混ぜておくのは、セメントが水に触れて急激に硬化するのを防いで、使いやすくするためです。

- セメントには水が必須 -

セメントは化学反応の1つである水和反応によって固まることを前編で紹介しました。モルタルやコンクリートが所定の性能を発揮するには、順調に固まる必要があります。そのため水に関するケアを行いますが、これを「養生」といいます。
養生は、もともとは衛生を守り健康の増進に心がけること、病気をなおすように努めることなどの医学や健康に関する言葉で、健康に注意する、手当をするという意味です。医者の不養生という言葉がよく知られています。


建設産業では、建設技術としての注意する、手当をするという意味で、「養生」という言葉を使います。例えば建設途中の建設物が雨や風の影響を受けないように対策をする、作業員や歩行者が怪我をしないように危険個所の保護や注意喚起することなどです。
モルタルやコンクリートでも「養生」という言葉を盛んに使います。モルタルやコンクリートの表面が乾燥しないように水を補給したり表面を覆ったりする手当のことです。まさに医者のようにモルタルやコンクリートの容態に注意して手当をするという意味です。


中編では骨材の石のこと、セメントの種類、「養生」について紹介しました。後編ではニーズや意識とともに多様化するコンクリートについて紹介します。