コラム

第1回 はじめに

地盤変形と地下水のモニタリング/第1回担当:里 優(2021.03)


地層科学研究所では、クラウドを使って井戸の水位計測の長期モニタリングを行う、Geo-Vizmoと名づけたサービスを開発しています。このサービスは、自治体などによる過剰揚水の監視や、地震などの緊急時に活用する井戸の保全を効率的に行うことを目的としています。


一方で、地下水の変動と地盤の変形は密接に関係しています。例えば、地下水のくみ上げに伴う地盤沈下、地震時における地盤の液状化、地震前後の井戸の枯渇や温泉の湧水量変化などです。したがって、地下水位の変化をモニタリングすることは、地盤に生じている変化をモニタリングすることにつながります。仮に、地下水位の変化とともに地盤の変形を同時に計測する計測することができれば、地下で何が起こっているかを知るための大きな手がかりとなります。


実際に、日本では国土の防災を目的として、地盤変形や地下水位のモニタリングがたくさん行われています。
国土地理院では、GNSS(Global Navigation Satellite System / 全球測位衛星システム)を利用して、電子基準点と呼ばれる計測点の座標を求め、これを地殻変動の観測や測量作業に活用しています。電子基準点は全国に1,300点設置されており、日本列島の変形がモニタリングされています。



宇宙航空研究開発機構(JAXA)では、その事業の一つとして陸域観測技術衛星2号「だいち2号」(ALOS-2)を運用しており、地図作成や災害状況の把握、資源探査などの幅広い分野で利用されています。特に、搭載されているLバンド地表可視化レーダー「PALSAR-2」を使った地表面形状の計測結果は、地震や断層、火山の活動のモニタリングに重要な役割を果たしています。



防災科学技術研究所では、地震動を精密に観測するための2つの強震観測網(K-NET、KiK-net)が運用されています。K-NET(Kyoshin Net:全国強震観測網)は、全国約1000カ所に約20kmの間隔で地表に設置された地震計で構成されています。KiK-net(Kiban-Kyoshin Net:基盤強震観測網)は、全国約700 箇所の地表と地中(井戸底)の双方に設置された地震計からなり、鉛直アレーを構成しているのが特徴です。



産業技術総合研究所地質調査総合センターでは、東海から四国にかけて設置された50ヶ所あまりの深井戸において、地下水位、ひずみ、水温、地震波形などの計測が行われ、最新データがWell Webと呼ばれるサイトで公開されています。地震前後の地下水変化の様子を分析し、東海や東南海地震の直前予測に挑戦しています。



このように、日本列島を対象として地表の変位や地下水、地震動の観測が行われています。また、これらを総合して得られる情報をもとに、地震や地殻変動のリスク評価が行われます。本シリーズでは、前半部でこれらのデータの使い方を検討し、後半部では地盤変位と地下水の関連性に注目して、地下水観測の重要性について言及したいと考えています。