やわらかサイエンス

並んだ石いろいろ(中編)

第95回担当:藤原 靖(2018.10)

石を積んで作った石の室 古墳の石室

古墳の石室は、お墓である古墳の遺体を埋葬する部分、部屋のことです。古墳そのものは土でできており、その内部に石を積み上げて石の部屋を作り上げています。有名なピラミッドも石でできたお墓です。ピラミッドの場合は、全てを石で作り上げた建造物です。その内部にいろいろな部屋や通路などの空間が作られています。


古墳の石室には3種類の石の組み方と2種類の部屋の形式があります。


<石室の石の組み方と形>


石室を組み上げる石材には自然の石と加工した石とがあるそうです。その積み方には、大小さまざまの石を積んだ「乱石積み」、割り石を積んだ「割り石積み」、加工した石をきちんと積上げた「切り石積み」があります。


石室の構造は2種です。遺体を納めてから、その周囲に石で4つの壁を積み、最後に上に天井となる石を置く竪穴(たてあな)式石室と周囲に石で3つの壁と天井を積んで、埋葬後に入口となる残りの壁を閉じる横穴式石室です。横穴式石室の方がやや時代が新しく大陸




<壁画のある石室>
高松塚古墳

高松塚古墳の石室の壁画は、教科書でも馴染みのある「飛鳥美人」で有名です。凝灰岩の切石を組み立てた石室に漆喰が塗られ、その上に人物像、月と太陽、四方四神、星座が描かれています。東壁には男子群像、四神の青龍(せいりゅう)、太陽、女子群像が描かれ、西壁にはこれと対称的に、男子群像、四神の白虎(びゃっこ)、月、女子群像が描かれています。北壁には四神の玄武(げんぶ)、天井には星座が描かれ、南壁にあるはずの四神の朱雀(すざく)は盗掘で現存しません。


キトラ古墳

キトラ古墳の石室の壁画は東西南北が残っているので有名です。東西南北の四壁の中央に青龍、白虎、朱雀、玄武の四神が描かれています。さらに四神それぞれの下に十二支の獣面の人身像が3像ずつ描かれていますが、東の寅(とら)、西の戌(いぬ)、南の午(うま)、北の子(ね)など6像だけが確認できるそうです。


青龍:東方を守る長い舌を出した竜の形の伝説上の神獣
朱雀:南方を守る鳳凰様の鳥形の伝説上の神獣
白虎:西方を守る細長い体をした白い虎の形の伝説上の神獣
玄武:北方を守る脚の長い亀に蛇が巻き付いた形の伝説上の神獣




キトラ古墳壁画体験館・四神の館(文化庁 キトラ古墳壁画保存管理施設)ホームページより抜粋(https://www.nabunken.go.jp/shijin/


また天井には三重の同心円(内規・赤道・外規)と黄道(太陽が地球を中心に運行するように見える大円)、その内側には北斗七星などの星座が描かれ、西に月、東に太陽が描かれているそうです。星座は星宿図(せいしゅくず)と呼ばれ、約600の星と34種の星座が描かれており、古代中国のものをもとにしたもので、現存する星宿図では世界最古のものとではないかと注目されています。


<石室の石材>

古墳に使われた石材については、いろいろ調査が行われ、多くの種類の石材が使われていることが知られています。


古墳の中心である奈良・大阪では、石室に用いた石は、節理が発達したものを割石や板石として用いました。時代が進むにつれて硬い石も使われ、渡来人の石工技術によって加工された形の整った切石が隙間なく積まれるようになりました。一方で柔らかい溶結凝灰岩をブロック状に切って積むこともあったようです。


前期 :新第三紀の安山岩や玄武岩など
中期 :上記の他に結晶片岩など
後期 :上記の他に花崗閃緑岩や片麻花崗岩など
終末期:上記の他に溶結凝灰岩など


溶結凝灰岩:火山の噴火で火山灰が積もって粒子が結合して固くなった石。ガラス質で外観は溶岩のようで、柱状節理が発達。北海道の層雲峡(そううんきょう)、大分県の耶馬渓(やばけい)、宮崎県の高千穂峡(たかちほきょう)などの渓谷が有名。

その他の地方では、地域の特徴のある石も使われたそうです。また石を積んだ石室ではなく、柔らかい溶結凝灰岩をくり抜いた横穴墓が九州で多く見られますが、茨城県や福島県でも凝灰質砂岩、砂泥岩、溶結凝灰岩をくり抜いたものが多く、九州との交流があったのではないかと考えられています。


前期 :岡山県や四国地方では古銅輝石安山岩(サヌカイト)など
中期 :北九州では粗粒玄武岩(ドレライト)、中九州では緑泥片岩など
後期 :九州では結晶片岩、群馬県では角閃石安山岩、栃木県では凝灰岩など
終末期:群馬県では凝灰岩、栃木県では軽石凝灰岩(大谷石)など


サヌカイトは安山岩の一種で讃岐の石という意味で命名された。讃岐石ともいい、叩くとカンカンと金属音がするのでカンカン石とも呼ばれる石。縄文時代から石器の材料として使用された。現在もサヌカイトは楽器(石琴)として使われており、コンサートも行われています。1964年の東京オリンピックの開会式で、開始を告げたのもサヌカイトの音色だったそうです。

大谷石は、栃木県宇都宮市の大谷町付近一帯で採掘される石材。柔らかく加工がしやすいことから、古くから外壁、土蔵、石垣などの建材として使用されてきた。耐火性があるのでパンやピザの石窯にも使用される。大谷町には大谷資料館(OYA HISTORY MUSEUM)があり、地質や採掘方法などの紹介とともに地下の採掘場を公開し、コンサートや美術展などのイベントにも活用されています。

中編はここまでです。古墳は、その時代の権力者のお墓ですが、作り方もさることながら、その装飾の技術は非常に高度で、描く内容は最先端科学だったのです。後編では「石を積んで作った壁 石垣」を紹介します。