やわらかサイエンス

小さな働きものいろいろ、火山から(後編)

第93回担当:藤原 靖(2018.08)

カルデラ噴火という巨大な噴火の産物であるシラスですが、活躍の範囲は広いようです。その一端を紹介します。


粒が小さくて軽いシラス

シラスは大量の細粒の軽石や火山灰などが一気に堆積したものなので、通常の火山灰土壌のように植物や土壌微生物などに由来する有機物が全く含まれていません。シラスは無機質100%の材料ということが言えます。


シラスは火山灰なので、ほとんどが火山ガラスという鉱物からできています。実際には斜長石や石英などの鉱物が少し混じっています。火山ガラスの主成分はケイ酸と酸化アルミニウムです。


シラスの特徴として、火山ガラスの粒子の形と大きさが非常に多様であることです。大きい粒も小さい粒も火山ガラスで、しかもその形がいろいろです。したがって、これを空間に入れると隙間がたくさんできます。シラスの物理的な性質として、非常に空隙が多く、比重が1.3程度と一般の土に比べて非常に軽くなります。この空隙の多さと軽さは、後で紹介しますが、シラスを利用する上で大いに役にたっています。


複雑な火山ガラスの粒子の形と粒の大きさという特徴は、インターロッキング効果として特殊なせん断特性を示し、急こう配でもシラスの層が崩れることなく自立することが知られています。一方で空隙の多さと軽さから、降雨などで水分が多くなりやすく、多くなると流されやすいことで斜面の侵食や崩壊が発生することが知られています。




特長を生かして大活躍

シラスの利用は、1番目は農業です。空隙が多いので水はけが良すぎて、水を溜めることが難しいため水田には向いていません。畑作でも栄養分が非常に乏しく、水はけが良いので乾燥しがちになります。そこで、シラスの畑でも育つサツマイモが普及するようになりました。稲作ができずサツマイモが獲れるので、米から作る日本酒ではなく、芋から作る芋焼酎が特産となった原因の1つです。


農業の近代化により潅漑(かんがい)用の水が得られるようになると水はけの良さが利点となって桜島大根を代表とするダイコン、ニンジン、大豆、茶などが栽培されるようになりました。特に茶は静岡に次ぐ生産量で、生産量では静岡茶、鹿児島茶、宇治茶の三大茶だそうです。また牛や豚の生産も盛んです。




2番目は建材です。複雑な火山ガラスの粒子の形と粒の小ささと空隙が多いというシラスの特徴から、消臭・調湿機能に優れ、自然素材系の健康建材・シラス壁として活用されています。昨今問題となっているシックハウス症候群に対しても効果を発揮するとされています。シラスは強く固まっておらず、有機物などの混入も無いので、粉砕や焼成が不要という材料としての扱い易さをもっています。


3番目は機能性の材料や技術としての活躍です。シラス粒子を1,000℃程度の高熱で加工し発泡させた「シラスバルーン」という軽量で断熱性に優れた材料があります。軽量モルタル、OA フロアー、ロックウール天井材、セッコウプラスター、軽量PC 板などの無機建材用、FRP 充填材、ポリエステル系パテ材などの樹脂系部材、建築用外装、機械塗装、下地処理用などの塗料用、屋上庭園、ゴルフ場グルーン、園芸などの土壌改良材用、その他、紙粘土、接着材、自動車用部材、農薬用特殊増量材などに使われているそうです。




シラス多孔質ガラス(Shirasu Porous Glass)というハイテクの製品があります。宮崎県工業試験場によって1981年に開発された特殊なガラスです。約50%が空隙というガラスで、その空隙の大きさが均一です。さらに熱処理する条件を変えることで、空隙の大きさを0.05~50ナノメートルの範囲でコントロールできるそうです。


微細な空隙の直径を任意に選択可能なので、液体や気体のフィルターや吸着剤に応用され、微細で均一な粒子・気泡の形成機能により機能性材料、医薬品製剤、電子デバイス接合材料などの有力な製造手段になることが期待されているそうです。


社会科でお馴染みのシラスの活躍ぶりは如何でしょうか。ハイテク分野での活躍も大いに期待されているとはすごいですね。桜島の噴火などをTVで見た時には、是非、このシラスの話を思い出して下さい。